「その他の高次脳機能障害情報」に関するお役立ち情報
家族が高次脳機能障害になった場合に気を付けるべきこと
1 高次脳機能障害について
交通事故で頭部に大きな衝撃を受けた被害者の方の中には、頭蓋骨の骨折や頭蓋内の脳出血などの重傷を負う方も珍しくありません。
このように頭部に脳出血等の生死にかかわる大きな傷害を負った場合には、事故直後から入院などをともなって集中的に医療機関において治療が行われることが多いです。
担当する医師も、まずは被害者の方の一命をとりとめることを最優先にして診察及び治療を行います。
そして、無事に救急救命の目的が達せられ、一命をとりとめることができたとしても、そこで安心をすることはできません。
なぜなら、交通事故で脳出血を伴うような大きな脳外傷を受けた場合には、その後に、記憶力の低下や人格の変化など、脳の機能に様々な異常や機能の低下が生じることがあるからです。
このような、脳外傷後の脳機能の低下を、専門的には高次脳機能障害と呼びます。
認知機能などの高次元の脳機能に障害が生じることから、このような名前がつけられています。
2 高次脳機能障害の見落とし
高次脳機能障害は、骨折や裂創のように目に見える症状ではないため、家族の方などが注意深く被害者の方を見守らないと、見落とされてしまうことも少なくありません。
例えば、一見すると事故前と同じように会話ができていて、どこにも異常はなさそうなのに、方向感覚が著しく低下してしまって、事故前では考えられないような場所で迷子になってしまうというように、脳機能の一部分だけが大きく低下するような場合もございます。
あるいは、学生の被害者の方で、筆記試験の成績は優秀なのに、調理実習など実際に体を動かしながら段取りを組んで作業を進めなければならなくなると、混乱してうまく作業ができなくなるような場合もございます。
その他には、味覚や嗅覚に異常が出る場合もございます。
このような被害者の変化は、交通事故にあう前の被害者の方をよく知っているご家族でないと、気づくことが難しいことも少なくありません。
交通事故の被害者のご家族の方は、些細な変化でも遠慮することなく、脳神経外科等の主治医に相談して、その変化が交通事故の脳外傷によって生じた障害でないか診察を受けるように気を付けていただければと思います。
また,高次脳機能障害であった場合には,損害賠償について,しっかりと主張する必要がありますので,弁護士にご相談ください。
ご家族の方に高次脳機能障害が疑われる方へ
1 はじめに
この記事を読まれている方は、残念ながら、ご家族の方が、事故で頭部に損傷を負うほどの大怪我を負った方が大半だと思われます。
お怪我をされた方の一日でも早いご快復をお祈り申し上げます。
この記事をご覧いただき、怪我をされた方のためにも適切なご判断・行動につなげていただければと思います。
2 被害者を注意深く観察すること
被害者が、頭に怪我をされた場合でも、頭部外傷(脳挫傷)による症状が幸いなことに全く出ない方もいます。
しかし、記憶力低下、集中力低下、性格変化、理解力・判断力低下など、よく観察してみないとなかなか気づきにくい症状が徐々に出てくる場合がありますので、ご家族の方が、注意深く被害者の身体や精神状況を観察していく必要があります。
3 入院中に気を付けておくべきこと
⑴ 入院中は気付きにくいこともある
入院中の場合には、病室のベッドで横になっているだけの時間が大半であって、活動が制限されているため、被害者の方にどのような変化が起きているのか、気付くことがなかなか難しい場合もあります。
⑵ 入院中は医師や看護師に任せていいというわけではない
また、入院中なのだから、「医者や看護師がしっかりみてくれているから大丈夫であろう」と安心してしまうのも注意が必要です。
高次脳機能障害の症状については、医者や看護師ですら見過ごす場合がある要注意な後遺障害の一つなのです。
⑶ ご家族の方にしていただきたいこと
ご家族の方は、被害者の方を注意深く観察していただき、少しでも変わったところ、気になる点などがあれば、その都度、医師や看護師にその旨を伝えてください。
忙しい医師や、いい加減な医師は、「このくらいは入院中よくありますよ」などと流されることもあるかもしれませんが、伝えない限りは、カルテ(診療録)には記載されません。
後日、裁判などで、その症状について、あったと主張したくても、カルテには記載がないからという理由で、その症状がなかったと認定されてしまうことがあります。
4 退院後にしておくべきこと
⑴ ノートに記録しておくこと
これは、難しく考えなくて大丈夫です。
事故前と、事故後で被害者の方が少しでも変わったと思う点をノートなどに記録しておいてください。
スマホのボイスレコーダーでもメモでももちろん構いません。
メモの内容は、いつ、どこで、どのような場面で(食事中、トイレ中、着替えの際、家族との歓談中など)、どういう異変があり、どうなったかを詳細に記録しておいてください。
⑵ 日常生活状況報告書について
高次脳機能障害について、後遺障害申請をする際には、医者の先生に書いてもらう後遺障害診断書等のほかに、ご家族の方に書いてもらう「日常生活状況報告書」というものがあります。
これは、被害者の方が、事故前と事故後で、それぞれの場面でどのくらい変化したかを記載(数字に〇を付けるなど)するものです。
この書面は、被害者のご家族が症状固定後に記載するものですが、いきなりぶっつけ本番で書くのも難しいかと思いますので、あらかじめどのように書いたらいいかなどの説明やレクチャーを受けておくことをおすすめいたします。
この日常生活状況報告書と、医師に記載してもらう「神経系統の障害に関する医学的意見」の内容に乖離があると、適切な等級がつかない可能性がありますので注意が必要です。
5 詳細は当法人の弁護士までご相談を
高次脳機能障害については、ほかにも注意しておいた方がよい点などありますが、それはケースバイケースです。
ご自分たちのケースでは、どのように行動したらよいか気になる方は、ぜひ当法人の弁護士までご相談いただければ幸いです。