事務所選びのポイント
「弁護士に相談したのに、全く頼りにならなかった」ということを防ぐためにも、弁護士選びはしっかりと行いましょう。特に高次脳機能障害のような症状については、症状について深い理解や豊富な知識がある弁護士に相談することがとても大切です。
高次脳機能障害が生じていると認められ、かつ、症状に対して適切な等級を認められるためには、やはり早くから弁護士に相談することが大切かと思います。皆様や皆様のご家族等に高次脳機能障害の疑いがあるという場合には、お早めにご連絡ください。
事故後のちょっとした変化に気がつくことが、高次脳機能障害の早期発見につながる場合があります。早くから適切な検査を受け、きちんと症状を伝えることなどが大切ですので、おかしいと感じることがありましたらお早めに弁護士にサポートをお受けください。
高次脳機能障害を弁護士に依頼した場合の解決までの期間
1 受傷から症状固定までの期間
⑴ 症状固定期間についてはケースバイケース
受傷してから症状固定になるまでの期間は、受傷者ごとにケースバイケースです。
⑵ 保険会社も強引に打ち切ってくることは稀
高次脳機能障害については、むち打ち案件とは異なり、保険会社が強引に治療費の支払いを打ち切ってくることは稀です。
基本的には、主治医の先生が症状固定時期を判断し、保険会社もその判断時期までは、治療費を支払ってくれることの方が多いです。
もっとも、そもそも高次脳機能障害といえるのか微妙な案件であったり、症状の改善がみられないまま、あまりにも長く通院が続いていると、早く症状固定にするように促されることもあります。
⑶ 症状固定期間の一例
高次脳機能障害の場合には、おおむね事故から1年間で症状固定とされることが多いように思いますが、それよりも短い期間(たとえば半年くらい)であったり、それよりも長い期間となることもよくあります。
症状固定までの時期が、どれくらいでないと等級認定に不利だということは特になく、そこまで神経質になる必要はありませんので、ご安心ください。
2 症状固定後から等級認定までの期間
⑴ 後遺障害申請の準備
後遺障害申請は、症状固定になった後にすぐ申請できるわけではありません。
申請に必要な書類等の準備が必要となるからです。
⑵ 申請に必要な書類等
月ごとの経過診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書については、通っている病院が作成しますので、作成されるまでに少し時間を要します。
少なくとも作成に2~3週間以上かかると思っておいた方がいいでしょう。
あとは、事故後に撮影したレントゲン、CT、MRIなどのすべての画像資料も準備する必要があります。
その他に用意するものは、特に時間を要するものはありません。
⑶ 申請後から申請結果判明までの期間
後遺障害申請してから、審査結果が出るまでに2~4か月かかると思ってください。
審査機関が、医療機関に対して医療照会をかけることもあり、その際に医療機関側の回答が遅れると、さらに審査結果に時間がかかることもあります。
⑷ 異議申し立てをする場合
初回申請の結果が返ってきて、その結果が妥当でなかった場合などは、異議申し立ての準備をすることになります。
異議の準備や、異議申し立てから審査結果判明まではさらに数か月かかってしまいます。
3 等級認定後から解決までの期間
⑴ 示談解決までの期間
ア 損害額算定
損害額の算定は、資料がそろっていればそれほど時間はかかりません。
だいたい1週間~1か月くらい見ておけばいいでしょう。
イ 示談交渉
こちらが請求をかけて、相手方保険会社から回答がくるのは、だいたい1か月くらいです。
場合によっては、2か月くらいかかる場合もあります。
高次脳機能障害案件は、賠償金額が高額であるため、回答(保険会社の検討)に時間がかかるのです。
ウ 解決もしくは訴訟へと移行
諸事情にかんがみて示談でまとめるのであればそれで終わりますし、訴訟に移行する場合には、さらに解決までに時間がかかります。
⑵ 訴訟での解決までの期間
訴訟の準備に数週間から1か月程度、訴訟提起してから第1回の裁判期日が指定されるまでに、1~2か月かかります。
訴訟が始まってからは、相手方の争い具合にもよりますが、だいたい半年から1年以上はかかります。
4 トータルの解決期間
高次脳機能障害案件を弁護士に依頼した場合の解決までの期間は、最短で(10か月~)1年くらい、長くて2年以上かかると思ってください。
高次脳機能障害について弁護士に依頼すべき理由
1 結論
結論から申し上げますと、弁護士に依頼しないと、数百万円~数千万円少ない金額でしか賠償を受けられないというリスクがあります。
以下、その理由をご説明します。
2 高次脳機能障害で認定されうる等級
高次脳機能障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、1級、2級、3級、5級、7級、9級です。
高次脳機能障害の症状が確認できない場合は、12級13号(脳挫傷痕の残存が認められる場合)、もしくは14級9号が認定される可能性もありますが、以下では、1級~9級の等級が認定された場合でご説明いたします。
3 高次脳機能障害の後遺障害慰謝料
後遺障害の等級が認定された場合、後遺障害慰謝料が賠償されます。
金額は、赤い本基準ですと以下のとおりです。
1級:2800万円
2級:2370万円
3級:1990万円
5級:1400万円
7級:1000万円
9級:830万円
上記金額は、いずれも訴訟基準の満額の金額です。
示談段階では、訴訟基準の8割ないし9割しか賠償できないと主張されることもあります。
上記金額は、いずれも弁護士が介入しないと賠償してもらうことが難しい金額です。
ご本人様だけで交渉されますと、上記の訴訟基準での金額よりも低いことが多い、自賠責保険金程度の金額でしか賠償してもらえないということもよくありますので注意が必要です。
4 高次脳機能障害の逸失利益
⑴ 逸失利益の計算方法
基礎収入×A%×B
基礎収入についての詳細な説明は割愛させていただきます。
⑵ Aの説明
Aは、労働能力喪失率です。
高次脳機能障害が残ってしまったことによって、どのくらいの割合の能動能力が喪失したのかを表す数字です。
労働能力喪失率は、以下のとおり、等級ごとに目安の数字が決められています。
1級:100%
2級:100%
3級:100%
5級:79%
7級:56%
9級:35%
上記の数字は、あくまでも目安ですので、例えば、5級の人が必ず労働能力喪失率が79%とされるわけではありません。
裁判などでは、後遺障害の部位・程度、被害者の年齢、職業、性別、収入の推移等を考慮して、具体的にどの程度、仕事に支障が生じているかなどを主張立証していくことで、上記の数字よりも、高く認定されたり、低く認定されることもあります。
⑶ Bの説明
Bは労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数を表します。
労働能力を喪失している期間が何年続いているかということです。
労働可能な年齢は、原則67歳と交通事故の賠償実務上では考えられています。
①症状固定時から67歳までの年数
②症状固定時の平均余命年数の半分
のどちらか長い年数が、労働能力喪失期間となるのが原則です。
⑷ 逸失利益の金額の具体例
ア 9級、男性40歳、基礎収入500万円
例えば、40歳男性で基礎収入500万円の人に、高次脳機能障害で9級が認定された場合は、以下のとおりの金額になります。
500万円×35%(9級)×18.3270(27年(67歳-40歳)に対応するライプニッツ係数)=3207万2250円
※ライプニッツ係数は中間利息3%での数字
イ 3級、男性35歳、基礎収入800万円の場合
逸失利益の計算は、掛け算ですので、症状固定時の年齢が若ければ若いほど、認定される等級が高ければ高いほど、基礎収入が高ければ高いほど高額となります。
例えば、3級(労働能力喪失率100%)、男性35歳、基礎収入800万円の場合は、下記金額となります。
800万円×100%×20.3888(32年(67歳-35歳)に対応するライプニッツ係数)=1億6311万0400円
※ライプニッツ係数は中間利息3%での数字
ウ 実際には、必ずしも上記計算式のとおり認定されないこともありますが、上記金額は、弁護士に頼まないとまず賠償してもらえない金額です。
5 裁判基準の金額は弁護士でないと勝ち取ることは難しい
保険会社の弁護士が介入していない段階での回答金額は、自賠責保険金程度の金額でしか回答してこないことも多々あります。
後遺障害部分の自賠責保険金額は、例えば、9級の場合、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益両方合わせて616万円、3級の場合は2219万円程度という裁判基準と比べると著しく低い金額での賠償案を提示してくることも少なくありません。
このような、不当に低い金額での賠償金で終わらせないためにも、高次脳機能障害については、まずは、当法人の弁護士までご相談いただくことをおすすめいたします。
高次脳機能障害の難しさと弁護士を選ぶ際の注意点
1 高次脳機能障害とは
「高次脳機能障害」は,交通事故による頭部外傷により脳が損傷し,それをきっかけに言語や視聴覚,性格の変化や集中力等の日常生活能力などに影響を与えてしまう障害です。
言語,視聴覚,性格変化,日常行動等(記憶力の低下や判断力の低下など)に関する症状ですので,症状自体は多岐にわたり,かつ,目に見えにくいものです。
例としては,知っているはずの道で迷ったり,ボタンをかける動作がぎこちなかったり,自転車が乗れなくなったりなど,日常生活における障害が出てきます。
ただし,頭部外傷による脳損傷が前提のため,総じてこのような障害が残るケースの怪我は重く,事故直後には目立った外傷の処置に気を取られ,高次脳機能障害の症状については見落とされやすい,という難点もあります。
2 高次脳機能障害の要件
次に,この高次脳機能障害は,どのような場合に起きるのか,どのような症状があると後遺障害として認められるのか,についてです。
高次脳機能障害とは,脳の損傷が原因であり,頭部外傷をうけていること,具体的には,①傷病名としてある一定の頭部外傷の診断を受けていることが必須になります。
そして,②①の頭部外傷による脳損傷を裏付けるCTやMRI等の画像所見があることが必要です。
また,③事故直後に一定の意識障害があることなども必要です。
③については,当初の診断書に意識レベルの記載があること,カルテ等に意識障害を示す記載があることが非常に重要になります。
これら①から③が入口の要件ですが,症状の程度を立証するための,知能検査,記憶検査などの各種検査の結果も,等級を左右する重要なものです。
3 高次脳機能障害の難しさ
高次脳機能障害は,事故直後から,必要な要件を満たす意識障害や検査等が多数あるにもかかわらず,事故からある程度時間が経過してからしか症状に気付けないということが多いのが実情です。
そのため,高次脳機能障害になる可能性を意識して治療が行われておらず,事故直後に行うべき検査が行われていないために頭部外傷による脳損傷を裏付ける立証が難しいケースや,事故直後の意識障害の立証が難しいケースも見受けられます。
だからこそ,事故直後から,高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談することで,受けるべき検査や医師や看護師への対応方法など,立証を見越した治療中の注意点などのアドバイスを受けることが重要です。
4 高次脳機能障害の症状の程度と等級認定
また,高次脳機能障害が問題となるケースで認定される可能性のある後遺障害等級は,1級から14級まで多岐にわたりますので,残存する症状の程度がその等級を大きく左右することになります。
認定される等級によって賠償金の額も大きく変わってくるので,要件を満たしたあとの,症状の程度の裏付けも非常に重要です。
症状の程度を示す資料としては,通院中の看護記録や家族の記録,看護者や家族に書いてもらう日常生活状況報告書などがあります。
後遺障害等級認定においては,これらの内容が重要になります。
治療中から,詳細な症状経過や,症状が日常生活に与える影響などについて記載されていると,日常生活状況報告書の記載も充実したものにできます。
常に付き添ってみていられないことも多いので,医師や看護師とのコミュニケーションをとり,病院での様子を知っておくことも重要です。
5 高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談
高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談することで,治療中から気をつけるべきことや,医師や看護師との対応,保険会社との対応,その後の必要資料の収集などについて,適切なタイミングで適切なアドバイスを受けることができます。
弁護士法人心では,交通事故チーム,特に後遺障害チームをつくって内部研修やノウハウの蓄積・共有に力を入れております。
賠償の結果に大きく影響を与える可能性のある高次脳機能障害の後遺障害等級認定だからこそ,高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。